睡眠による快感の研究

序論

本日、ハローワーク雇用保険の説明会に出席しました。

この説明会では皆さんお楽しみのビデオ上映の時間があります。無職という共通点を持った老若男女が一同に会して、公務員の大人たちの手によってそこそこ手間をかけて作られた映像、それをスクリーンに投影したもの、およびスピーカーから流れる音声を感じ取ります。

私も職が無いとはいえ27歳のいい大人なので集中して観ようと思ったのですが、上映開始まもなく睡魔が、女性の睡魔が、あれは確か女将さんの睡魔だったかな?旅館の女将さんの睡魔が布団を引いています。

「まだ結構です」と右手を顔の前で振っていたのですが、その手が次第に振り子の動きになって自己催眠、ついには体全体が振り子の振動、振り子のシンドロームに陥り、脳はトリップ。現(うつつ)に残された耳にビデオの音声が流れ込んで、建設途中の夢の世界と混ざり合います。

上映開始から20分程経過した頃、何か特別なタイミングがあったわけではなく私はとつぜん超覚醒状態となり、それはなんとビデオの終焉まで持続されました。不思議な感覚でした。

頭の中ではつい先程まで存在した、シロップのかかった建設中の夢の、城の、その幻影、残像を後世に伝えるように、紡ぐよう、何かしらのエキスが巡回しているようで、私は真顔のまま恍惚としました。ほぼ、じとっとしていました。

隣に座った貴婦人が代わりにぐらつき始めており、左手の薬指のキラリと光ったのが鈍く軌道を描いていました。

 

前兆

ふと、大学の基礎ゼミの薄暗い部屋の中で6人の学生が一斉に振り子になったことを思い出しました。あのときもビデオを見ていました。そこにいた教授以外の全員が、ほぼ、じとっとしていました。

 

一般常識

ポケットピカチュウという万歩計がありましたね(ありましたね、というと現在進行形で使用している人に大変失礼ですが)。

ポケットピカチュウを腰に装着して、ポケットピカチュウの液晶画面に大きな数字を刻みたいがために一日中歩き回った日があったとしましょう。

疲労困憊で自宅に帰ってくると、ふかふかのベッドがあなたの帰りを待っていました。ベッドの前まで吸い寄せられ、磁力の関係で半回転し、横たわります。

 

どうでしょうか。

 

はっきり言ってエクスタシーには程遠いでしょう。2次試験止まりといいましょうか。

安心感、開放感などといったものが雑味となっています。

 

やはりそれでは。

 

事実

たとえば家のソファーで映画を観ています。集中して観たいのですが、眠気で意識が朦朧としてきます。ついには意識が完全に飛んでしまい、後ろの壁に頭をぶつけてしまいます。もちろんその瞬間完全に覚醒します。

頭には鈍い痛みを感じますが、こんなにも愛おしい痛みはありません。

熱く迸るなんらかのエキスが痛みを包み込んでいるようにも感じます。愛?

Re:愛って?

 

乾いた音がしばらく浮かんでいます。

私は真顔のまま恍惚としています。完全にじとっとしています。

 

さあ、映像を巻き戻すときです。